週刊田崎

田崎 健太 Kenta Tazakimail

1968年3月13日京都市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、1999年末に退社。
著書に『cuba ユーウツな楽園』 (アミューズブックス)、『此処ではない何処かへ 広山望の挑戦』 (幻冬舎)、『ジーコジャパン11のブラジル流方程式』 (講談社プラスα文庫)、『W杯ビジネス30年戦争』 (新潮社)、『楽天が巨人に勝つ日−スポーツビジネス下克上−』 (学研新書)、『W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)、『辺境遊記』(絵・下田昌克 英治出版)、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)。最新刊は『維新漂流 中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)、『ザ・キングファーザー』(カンゼン)。
早稲田大学講師として『スポーツジャーナリズム論』『実践スポーツジャーナリズム演習』を担当。早稲田大学スポーツ産業研究所招聘研究員。『(株)Son-God-Cool』代表取締役社長として、2011年2月に後楽園ホールでのプロレス『安田忠男引退興行』をプロデュース、主催。愛車は、カワサキZ1。
twitter :@tazakikenta

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2013年7月27日

今週はずっと打合せと取材の連続だった。
京成立石、六本木、椿山荘、大宮、新百合ヶ丘――ずいぶんと移動が多い一週間だった。次の単行本、次の次の単行本に向けてすでに動き出している。取材対象が違うので、その度に資料を読み込んで頭を切り換えなければならない。
当然、原稿も書いている。さらに次の国外出張のアポイントメント取り――とにかく、忙しい。
ストレス解消なのか、ついついネットショッピングのページを見ている自分がいる。本当は店舗に行き、実際に商品を見ながら買い物をするのが楽しいのではあるが、この便利さには変えられない。

先週土曜日は、調布FMの『アントキの猪木 わっしょいJAPAN』の公開録音へ。アントキの猪木さんと久し振りの再会。なすびさん、BJリーグの東京サンレーヴスの元安君、テニス協会の鈴木さんと。勝新太郎さんから、ブラジルの治安、キングファーザー、ペタンクで国体出場、そしてW杯と五輪の招致について話してきた。今回の放送は二回に分けてオンエアー予定。

取材後、大宮アルディージャの新しいクラブハウスを案内してもらう。クラブハウスが新しくなったことが、選手のモチベーションに繋がり、今季の好成績に繋がっているという。

買ってしまった…drybonesのオートバイ用グローブ、それも二つ…。

2013年7月14日

ここのところ、うんざりとするようなことが起きている。
電子出版について、である。
ぼくたちは単行本を出す際、出版社と出版契約を結んでいる。契約には期間があり、二、三年程度となっている。出版社側が契約期間終了後も重版をかける予定があれば、契約を結び直す、あるいは新たに文庫の契約を結び直すことになる。
ぼくの本の何冊かは契約期間が切れたままになつていた。出版社にとっては商売にならないかもしれないが、ぼくにとっては大切な作品であり財産である。それを読まれる可能性がある形で残しておきたい。電子出版化するのは利益を生み出すかどうか以前に、作家としての本能である。
二冊の本が落ち着いたこともあり、出版社の担当に連絡して入稿データを引き上げることにした。
単行本の担当者はぼくにとっては戦友のようなものである。かなり前の本もあったが、みな忙しいにも関わらず、色々と動いてくれた。非常に感謝する。
興味深いことに各出版社、それぞれ違った対応だった。
一つの出版社では、「自社で電子出版化」したいという返事だった。契約期間の切れた著作物に、出版社の権利はない。ただし、作家と出版社の間には、信頼関係があるものだ。担当編集者の助言が作品の質をあげることもあるし、ノンフィクションの場合は取材経費などの負担もしてもらっている。かつての出版契約書については電子出版に関する項目はなかったとしても、単行本を出した出版社が電子化したいというならば、任せたいと思う。いわば、出版社の作品に対する「隣接権」である。
別の出版社は、担当が調べてくれたところ、印刷所に入れた入稿データが10年以上前で、デジタルデータとして残っていないことが分かった。

20年以上前からぼくはワープロ及びパソコンで原稿を書き、デジタルデータで入稿してきた。担当編集者に渡したテキストデータはもちろん手元にある。ただし、著者の入稿データがそのまま本になることはまずない。印刷所から文書として出力された初校を著者が読むのはもちろんだが、編集者と校閲が不明な点を指摘し、著者が確認。再校、場合によっては再々校と完成度を上げて行く。
原稿を書いていると次々と不明な点が出てくるものだ。入稿の段階で間に合わず、校了で追加取材による修整を大幅に加えることもある。だから、最初にデジタルで渡した原稿と単行本の内容はかなり違っている。
単行本を作り上げるにはこうした出版社の力を借りている。だからこそ、出版社には隣接権を認めるべきだと思う。
但し――あくまでも著作権は著者にある。
一冊の本では、意外なところが権利≠主張してきた。
担当編集者は申し訳なさそうに電話を掛けてきたところによると、出版社側としては、入稿データを戻すことは全く問題ない。とはいえ、出版社の担当の手元には入稿したデジタルデータは残っていない。持っているのは印刷所である。この印刷所がデジタルデータを返却するのならば金を払えと言ってきているというのだという。その金は十数万円だった。
全く意味不明である。
どういう法解釈で印刷所に著作の権利があるのか、全く分からない。そもそも出版物を出すために、仕事として請け負い、データを預かっただけだ。創作活動には一切関係ない。データを持っているから金を払えというのは、厚かましい。印刷物から電子出版へと切り替わりつつある中で、何らかの権利主張をしたいのだろうが、あまりに滅茶苦茶だ。

もう一冊の本は、自社では電子出版化する気はない、著者が電子出版するならば「してもいい」、ただし、「入稿データは渡せない」という返事だった。「してもいい」という返事で首を傾げた。そもそも出版社には契約が切れているので、許認可の権利などない。電子出版しますよと声を掛けるのは著者のモラルではあるが、権利を認めてもらおうなどとそもそも思っていない。そして入稿データを渡せないというのは、何の権利があってのことだろう。
こんな当たり前の権利関係を理解していない人たちが法務にいる。だから、出版業界は斜陽化するのだ。
今年からぼくは文藝家協会の会員となった。会報を読んでいると、出版社の隣接権云々についての論議はあったが、出版社と敵対しても著者側の権利を守ろうとする意識が薄いように感じる。

日本社会の問題は、才能を大事にしないところだと常々思ってきた。
零から物事を作り出せる人間よりも、中間搾取するテレビ局、広告代理店、大手出版社などにお金が落ちるシステムになっている。作り手に対する敬意が薄いのだ(出版社が敬意を払うのは、売れる人間だけだ。それは作り手の才能に対する敬意ではなく、売れるからだ。自己啓発本がどんなに売れようが、そんな著者をぼくは何とも思わない。敬意を払われるべきなのは、他人が出来ないオリジナルな表現者であり、売れそうな物を器用に作る人間ではない)。
それは作家や漫画家、映画監督、脚本家、ディレクター、音楽家など創作関係だけでなく、野球選手やサッカー選手のアスリートについても同じだ。『此処ではない何処かで 広山望の挑戦』では、広山というサッカー選手の国外移籍について描いている。これは当時のクラブが選手を所有物だと考えているところが問題の前提にあった。団野村さんが野茂英雄や故伊良部秀輝さんのために戦ったのも、アスリートの傑出した才能を軽んじる日本のプロ野球に苛立ったからだ。

こうしたことは正当に伝わることは少ない。
大手出版社、テレビ局、新聞社――日本の大手メディアは機能しなくなっている。
自分も出版社の社員だったので分かるが、社員としての高給が安全地帯で保証されていると、だいたいの社員は腐る。戦うのはごく一部だけだ。ほとんどが新たなことに対して足を引っ張るようになり、組織としての柔軟性が失われる。それでも機能していた時代はいい。ところがもはや社会から取り残されている。そのことを鈍感な内部の人間でさえ感じており、変化を避けて、自分が在職し年金を貰う間の現状維持を願う。
そう、これはぼくが『維新漂流 中田宏は何を見たのか』で書いた日本の政治、社会状況に良く似ている。今の日本の病だ。
ぼくたち作家は日本語を使うので、国外に易々と脱出することはできない。しかし、そうでなければ、外に出たいと思う。日本以外の方がずっと面白いことが出来るだろう。

昨日は中田宏さんが日本維新の会から出馬した小倉淳さんの応援に入るというので、同行取材した。今回の参議院選挙、自民党が優勢らしい。『維新漂流』に書いたように、自民党は既得権益者の団体でがんじがらめの政党である。憲法改正より何より、自民党は日本の今のどうしょうもなく、身動きのとれない、社会体制を変えることは出来ない。結局、先送りするだけだろう。

『維新漂流』 中田宏は何を見たのか 2013年5月24日発売

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2013年7月8日

今までぼくは四十を超える国と地域を旅してきた。しばしば、どこが一番好きかと尋ねられることがある。
好きなところも嫌いなところもあるが、やはりブラジルは特別である。
今までもう何度訪れたか、などとは数えるのは途中で止めた。隣国のウルグアイやパラグアイなどに行ってから戻ったりと、数えることは不可能なのだ。だいたい年に最低一回程度、二、三週間は地球の裏側のあの国を訪れている。これまで延べ二年間ぐらいは、ブラジルに滞在してきただろうか。四十数年のぼくの人生の中でもかなりの割合になる。
そんなブラジルについて『フットボールチャンネル』で連載を始めることになった。W杯まで、ぼくの大好きなブラジル・サッカーについて書いていくことになる。まずは『キングファーザー』こと納谷宣雄さん、カズさんから。乞うご期待。

アラゴアス州マセイオのCRBにて。
昨日今日の日本の暑さはまるでブラジルだ。気温に加えて湿度がある。これで海に寝っ転がってビールでも飲めるのならばいいが、東京ではアスファルトの照りつける中を歩いて打合せ、そして原稿を書かねばならない。

2013年7月4日

親しい方は知っていると思うが、ぼくが自著の世界にもっとも深く入り込むのは取材をしている間である。取材しているうちにその人が降りてきて、夢を見続けることもある程だ。
本が出版された頃は、だいたい次の本の取材に浸っている。本が出た時点で作品は読者の物になる。書き上がった作品に対して作家は責任を持つのは当然だが、どのように読むかは読者に任せるべきだ。一つの本を仕上げた後、次の作品の準備に熱中しているというのは、作家として正当だと思っている。
だから、著者インタビュー等を受ける時は、取材していた時間を自分の手元に引き戻すという作業が必要になる。その意味で、先週木曜日のラジオ出演『垣花正 あなたとハッピー』出演はなかなか骨が折れるものだった。
『維新漂流 中田宏は何を見たのか』から始まり、『ザ・キングファーザー』、最後は勝新太郎さんと、話題が政治、サッカーとめまぐるしく変わった。
パーソナリティの垣花正さんとは、ずっと前からニアミスの関係だった。ぼくがテリー伊藤さんとうえやなぎまさひこさんの番組に良く出ていた頃、垣花さんはレポーターでスタジオにいなかった。同じ番組に出ていたのだが、会って話をするのは初めてだった。
うえやなぎさんにも同じことを思うが、ラジオのパーソナリティというのは、きちんと本を読んでくれている。話題が多岐に渡りながらも、本当に楽しい時間だった。
ぼく自身、ラジオで育ってきた。KBS京都の『ハイヤング京都』、毎日放送の『ヤングタウン』。とくに地元のハイヤング京都では何回も葉書を採用された。ラジオはテレビと比べるとずっとゲリラで個人的だ。だから、面白いと思う。

『ザ・キングファーザー』にも登場する元テレビ東京の寺尾さんからお借りした、納谷さんがブラジルの雑誌に取りあげられた時の記事。足下の下駄というのがブラジル人にとっては日本風なんだろう。

『ザ・キングファーザー』  2013年6月20日発売

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『維新漂流』 中田宏は何を見たのか 2013年5月24日発売

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